小さいころ、31日夜に年越しそばを食べ、深夜に出かけていく父母を横目にカウントダウン番組を見ていたりしたものです。

父母が大みそかの深夜に出かけるのは近所の二つの神社です。
よく遊んだ富士神社と氏神様に、年をまたいでお参りする二年参りをしていました。

区切りの時には日が変わる時に起きてにぎやかすのは「庚申様」のあつまりも同じです。
地域の長老が持ち回りで宴会をするのを父の代までは続けていました。
そういう習慣が古代のしきたりのままに残っていたのが昭和です。

「カマドのカミ」としておくどさん(竈)に御札を張り付けるのが慣わしでしたが、この竈の神、実は「夫婦関係修復」した過去がありました。

竈の神 オキツヒコ(奥津彦命 奥津日子神)

オキツヒコという名は「船霊」と「竈神」の二人がいらっしゃいますが、今日のご紹介は竈神(かまどかみ)のほうのオキツヒコの紹介です。

口がうるさいオキツヒコの離婚

オキツヒコには祖父にソサノヲがいます。
ソサノオの第六子にオオトシクラムスビという神がいて、年神様としてお正月にお迎えする神様です。
大歳神は家を守るヤマサ神の1柱ですが、息子の離婚問題について頭を悩ませていました。
その原因は息子の口が悪く妻を褒めることもなくののしることが日常茶飯事だったことでした。

何かと口うるさく妻に文句を言い、そのような激しい言葉というものは、吐き出した瞬間自分の耳からも体に入って火がつき止まらなくなるものなのです。

夫のモラハラが止まらず妻のストレスはたまる一方でした。
妻ははけ口がみつからまま、優しい口ぶりで近づく男につい気を許してしまいました。
息子のオキツヒコは当然ながら怒り、いよいよ「離婚だ!」となってしまったのです。

息子の離婚問題をセオリツヒメに相談する年神様

息子の離婚に頭を悩ませた父クラムスビは、イサワノ宮のセオリツ姫に相談を持ち掛けます。

セオリツ姫はマフツの鏡を持ってこさせます。
するとなんとオキツヒコはそこになく、映っていたのはニステ竈でした。
つまり歪んだオカマがそこにいました。
マフツの鏡とはその人の本性が映る鏡なのです。
神社に行くと鏡が置いてあることがありますが、それは祈る人の本性を映すためなのですね。

伊雑宮(いさわのみや、伊勢市)
住所/三重県志摩市磯部町上之郷374
ご祭神/天照坐皇大御神御魂
アクセス/近鉄志摩線 上之郷駅 (徒歩約5分)伊勢神宮より車で約30分

マフツの鏡に映った妻の顔は・・・

六ハタレの騒乱の時にハタレの本性を映すためにマフツの鏡が使われました。
サルの顔が映ることもあれば、鵺・あしもちが浮かび上がったこともあります。
肉眼では人であっても、そのマフツの鏡の前では本性を隠すことができないのです。

妻がマフツの鏡に顔を映すとツクマ鍋が現れました。

米原市の筑摩神社(ちくまじんじゃ)に奇祭鍋冠祭(なべかぶりまつり)が今も残っているそうです。
今では8歳の少女が鍋をかぶって練り歩くようです。

筑摩神社の鍋冠り神事
過去には鍋冠りは少女ではなく妙齢の女性の役目だった。鍋冠りの女性はそれまでに付き合った男の数だけ鍋釜を冠るという不文律があり、平安時代の歌物語『伊勢物語』にも「近江なる筑摩の祭とくせなむつれなき人の鍋の数見む」(第120段)と詠われるほど有名なルールだった。Wikiより

※この祭りは妻だけが恥をさらすみたいで公平ではないですが、本当は夫もカメをかぶらなければいけないんでしょう?

セオリツ姫曰く、自分の顔さえ鏡に映っていないとは恥ずかしさも余りあることでしょう。
二人ともの心がこういう姿になっていることを恥じいり、大いに悔いなさい。という事でした。

大歳神がお嫁さんにいったこと

二人ともに非があるのだよ、と諭されても夫は妻を許さず、妻は恥じ入って死のうとします。
それを押しとどめたクラムスビが嫁にいいます。
それもこれも我が子の醜い心を磨くための出来事だったのだ。と。

親の教えにオキツヒコはとうとう心を改め、再び妻と結婚し仲睦まじく暮らすようになりました。

そして諸国を巡り、

よおをふる はしめおわりの つつまやか
夫婦の初めから終わりまで、いつでもどこでも互いに包みあっていて世は栄える)

と夫婦の道を教えて回りました。
アマテルカミはオキツヒコの成長を喜び、オキツヒコを竈神と称えました。

オキツヒコに関連する神社

筑摩(ちくま)神社
住所/滋賀県米原市朝妻筑摩1987
ご祭神/主祭神は御食津神、合祀 大歳神、倉稲魂神、大市姫神
祭事/5月3日鍋冠祭り

年神様は、お正月にお迎えする福の神です。竈の灯を絶やさないことの大切なこと。
夫婦であっても親子であっても、どんなパートナーともつつみあう関係をくる年も築きたいと思います。

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コメント

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    >baynthy23122さん
    めずらしいですよね。
    ホツマツタヱという古い文書の中に出てくる神様です。
    神社のお祭りを辿ると、昔の風習の片鱗が残っていたりしますが、そのいわれが辿れる記述も多いですね。

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